4.17.2024

4/17/2024

やっぱりウォンバットは時速40kmで走ることができる?

オーストラリアで長く信じられてきた定説「ウォンバットは時速40kmで走れる」という説について、新たな展開があった。

今年2月、ビクトリア博物館の広報チームが、ウォンバット、特にミナミケバナウォンバット(Lasiorhinus latifrons)が時速40kmで走ることができるという説は誤りであると発表した。

では、なぜこれが否定されたのか?

Cosmos誌が報じたところによると、ビクトリア博物館はこの説の出所を、1984年にフリンダース大学の考古学者ロド・ウェルズ名誉教授が発表した論文にしか辿り着けず、ウェルズ教授はこの説は調査時にウォンバットを追う車両の速度と一致した結果に過ぎないとしている。

おそらく1960年代後半から1970年代前半に、ミナミケバナウォンバットを追いかけて、ラクロスネットのようなもので捕まえていた時に出た話だと思います。ストップウォッチを使って速度を確認した人はいないと思います。

とウェルズ氏は述べた。

ビクトリア博物館は、これがウォンバットが時速40kmで走れることの十分な証拠にはならないと述べていた。この考えは広く議論と関心を集め、これを読んだ南オーストラリア州のウォンバット研究者たちが反論を主張、ミナミケバナウォンバットは確かにそのスピードが出ると主張している。

有袋類の生態学と繁殖を専門とする野生生物学者、デビッド・タガート氏は、調査で走るウォンバットを追跡しているときに、車両の速度計が常に40㎞/hを示すのを見てきたと語っている。

ただし、いくつかの注意点がある。

まず、これは彼が調査しているミナミケバナウォンバットにのみ適用できる。

これは、キタケバナウォンバット(Lasiorhinus krefftii)と、一般的な 「ベア・ノーズド(つまり鼻に毛がない)」ウォンバット(Vombatus ursinus)の走り方については疑問の余地を残している。

ミナミケバナウォンバット

次に、これは繁殖期のミナミケバナウォンバットのオスでのみ観察されている。タガート氏はこの種の観察結果を、2023年に再版された「Strahan’s Mammals of Australia」に寄稿している。

彼らはメスを探して歩き回っていて、ウォレン(巣穴)から遠く離れたところで人間に出会い、姿をみられると慌てて逃げ出します。

とタガート氏はCosmosに語った。

この大きなオスのウォンバット、彼らは最大38kgにもなり、体は筋肉の塊で、一目散に走り出すのです。

タガート氏は、不慣れな場所で研究用の車両に驚いたオスが、本能的に巣穴に向かって一直線に走って帰るのだと考えている。

そのため、タガート氏は、ウォンバットを見失わずに捕獲できるようにする必要があると述べている。

10~20mの範囲に入ると、彼らはトップスピードに達し、あっという間に走り去ります。

と彼は言う。

巣穴から200m以上離れていると、やがて疲れて止まってしまいます。

科学的事実とかそういうのは?

アデレード大学の非常勤准教授であり、野生生物生態学、特にミナミケバナウォンバットの調査で30年の経験を持つデビッド・タガート氏なら、研究中の種の行動にコメントするのに十分な資格があるのは言うまでもない。彼の経験を持つ他の研究者であれば当然のことだ。

また、ビクトリア博物館はCosmosへの回答でタガートの調査結果を認め、以下のように述べている。

ご承知のように、このデータは査読付き刊行物で正式に発表されていなかったため、私たちのチームは知ることかできませんでした。このようなデータが現存すると知り、タガート教授に感謝しております。

では、このような事実を検証するためには何が必要なのだろうか?研究者が単純に「見た」と言うだけで十分なのか?

チャールズ・スタート大学で有袋類(コモンウォンバットを含む)の疥癬と交通事故死削減を研究している動物生理学者のヘイリー・スタナード博士は、ウォンバットの速度を陸上競技記録のように検証することは難しいミッションだが、この分野の多くの専門家は時速40kmという数字を事実として受け入れていると言う。

検証するのは難しいです。この情報をなんとなく受け入れて共有し、カンファレンスなどで話すときに、興味深い逸話として使うのです。

と彼女は言う。

でも、一般の人たちにも伝わっていく数字ではあります。

彼女によると、科学者によって受け入れられているものの、査読付き研究として公開されていない「事実」が、ビクトリア博物館のような公的な問い合わせやファクトファインディング(事実確認)の動きで疑問視されたときに問題が起きると言う。

そうなると、『科学者たちが本当のことを言っているのか?』という議論に戻るのです。おそらくそれは真実なのですが、確証できる確かな証拠がないだけなのです。

ビクトリア博物館はこの観点に同意し、Cosmosに次のように答えた。

発表されたデータがない場合、非凡な数字は集団の想像力をかき立て、過度に一般化され、誇張され、文脈から切り離されるリスクがあります。ミナミケバナウォンバットの速度と持久力を科学的に厳密な方法で正確に測定した人はまだおらず、この疾走が150mにわたって続けられること、あるいは3種のウォンバットすべてにあてはまることを示すデータはないように思われます。

ウォンバットのトップスピードを測る科学テストの課題

では、正確にウォンバットの速度を測ることはできるだろうか?

可能ではあるが、実現しそうにない。

タガート氏が指摘したように、ウォンバットの走行速度を正確に知ることは、科学的な目的はほとんどない。

とはいえ、ウォンバットに100メートル走をさせたところで、それもまた難しい。スタナード氏は、野外に専用コースを作る必要があると考えている。

できれば野生環境で、動物の自然生息地や走る能力などを妨害しない場所で行う必要があるでしょう。

つまり、何らかのマーカーを設置して、ウォンバットが走るのを見て距離を計るのです。ただ、最高スピードを観察したいのであれば、おそらくウォンバットを驚かせるか、走らせるよう促すことになるでしょう。

また、スタナード氏が指摘するように、倫理的に実験を行おうとすれば、ウォンバットを驚かせて最高速度を出させるためには、動物実験の倫理認可が必要になる。

ビクトリア博物館は、科学の重要な原則のひとつ「どんな事実も絶対ではなく否定可能だ」ということを強調して締めくくった。

科学における真実は決して最終的なものではありません。今日事実として受け入れられているものが、新たな観察やデータに基づいて、明日には否定されるかもしれません。ビクトリア博物館は信頼できる知識の情報源であることを誇りに思っており、オーストラリアの多様な動物相の理解に役立つ新しい科学的情報があれば歓迎します。

結論としては、ウォンバットは必要ならばおそらく時速40kmで走れる、ということになる。しかし、科学的なお墨付きを得るのは、当面は謎のままでありそうだ。

It turns out wombats can run at 40km/h - Cosmos Magazine

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