パナマ病TR4の脅威と遺伝子組換えバナナの開発
ケアンズも含めたここクイーンズランド州北部海岸地位といえば、熱帯気候と豊かな土壌で育てられる様々なトロピカルフルーツ!
そして南国のフルーツを代表する1つといえばバナナ!なーな。
因みにクイーンズランドで主に生産されているバナナの種類はよくあるキャベンディッシュ(どこでも見かけるでっかいバナナ)と、レイディーフィンガー(日本で言うところのいわゆるモンキーバナナ。小さい)という2種類がほぼ全体を締めている。
ミウラもバナナが好きだけど、どちらかというとレイディーフィンガー派。キャベンディッシュに比べて甘みが強く、ちょろっと食べやすい小ささなのと、冷凍しやすさが好き。キャベンディッシュに比べると高いんだけどな。
まあキャベンディッシュの方が皮も厚いし、大きさからも、長距離の運搬や貯蔵にも比較的耐えられる品種であるというのと、レイディーフィンガーに比べると長期間の保存が効くというのもあって、スーパーなどの市場で一般的によくみられ、手に入りやすい。
そんなわけで世界的にももっとも流通しているキャベンディッシュバナナだけど、非常に厄介な脆弱性を抱えている。
バナナを脅かすパナマ病TR4とは?
パナマ病TR4は、世界中のバナナに深刻な被害をもたらしている真菌性疾患(カビによる病気)。土壌を通じて根っこから侵入し、植物の水と栄養を奪って欠乏させ、最終的に枯死させてしまう。
キャベンディッシュに限らず、レディフィンガー、デュカスなど、様々なバナナ品種に感染する。
病害耐性を高めるための遺伝子組み換え技術
今回オーストラリアで承認されたのは、QCAV-4と呼ばれる遺伝子組み換えキャベンディッシュバナナ。
東南アジア原産の野生種バナナ”Musa acuminata spp. malaccensis"から、病害耐性遺伝子RGA2を導入している。この遺伝子は元々キャベンディッシュ自体が持っているものだが、機能していないために、パナマ病に対する耐性を持つことができなかった。
Musa acuminata spp. malaccensis
ムサ(バナナ)属の一種で、自然種。学名は「ムサ属アクミナータ種マラッカ亜種」という意味。
主に東南アジア(特にマレー半島)に分布しており、特徴的な葉や果実を持っている。現地では食用として利用されるほか、自然雑交や栽培によって様々なバナナの品種が生まれる過程においても重用な役割をはたしている。
研究者によると、パナマ病TR4の土壌感染菌は50年以上も生存可能で、バナナ産業にとって大きな脅威となっている。既に世界中のキャベンディッシュプランテーションで被害が出ており、バナナの未来を守るための対策が急務とされているものの、残念ながら現時点では治療法や予防法はみつかっていない。
そんでいつからスーパーに並ぶの?
食用としての承認が降りたとはいえ、この新しい品種QCAV-4がすぐにスーパーマーケットに並ぶことはない。
オーストラリアでは現在、パナマ病TR4の管理が厳重に行われており、うまいこといってるので、現状このバナナが市場投入される必要性がないのだ。あくまでこの品種の開発と承認は、将来的に備えた予防策であるということ。
QCAV‐4はキャベンディッシュ種に大きく依存するオーストラリアのバナナ産業を守るための予備的計画として位置づけられている。
オーストラリアのバナナの約95%はクイーンズランド州で栽培されており、そのうちの97%がキャベンディッシュバナナです。
と研究者は述べている。
QCAV-4は世界輸出産業にとって、パナマ病TR4に対する保護手段であるだけではなく、1万8千人のクイーンズランドのバナナ生産者を含む13億ドルのオーストラリア産業の安全網でもあります。
遺伝子組換えバナナの安全性
特にいわゆる「自然派」を名乗る人々にとっては、それがどんなものであれ「遺伝子組み換え」とつくだけで嫌悪する人も多いだろう。
ミウラは実はあんまり抵抗ない派。どういう経緯でどういう組み換えがされたのかは調べるけどね。仕組みが分かれば、大概のものはどうということはないのだ。
とにかく人は「よくわからない」ものを敬遠しがちなもので、遺伝子組み換え食品についてもやはりその安全性についての不安はつきものだ。
しかし、オーストラリア・ニュージーランド食品基準庁(FSANZ)はQCAV-4の消費適合性を認可している。
FSANZは2024年2月16日、オーストラリアとニュージーランドの食品大臣に承認決定を通知しました。食品大臣は60日以内に審査を要求することができます。要求がなければ、オーストラリア・ニュージーランド食品基準コードは改訂され、QCAV-4由良食品の販売及び仕様が許可されることになります。
と公式サイトで述べられている。
研究者は、バナナが持つ1つの遺伝子を別のバナナに移したに過ぎない、と説明している。
怖がるようなことは何もありません。この遺伝子は元々キャベンディッシュ種バナナの中にも存在していましたが、機能していなかっだけです。私たちは、その遺伝子を機能するバージョンと入れ替えたのです。
そういわれると分かりやすくていいいね。単純に種類の違うバナナ同士でパーツ交換が行われたというだけ。これまであるだけで機能してなかったお飾り遺伝子?がその役割を果たすようになったということでそ?品種改良も似たようなもんじゃろ?
まあどちらにしろ、この品種にお目にかかるときは、オーストラリア国内でパナマ病TR4が流行してしまったときなので、できればそうならないように願いたい。
Genetically Modified Bananas Approved For Australian Consumption - Better Homes and Gardens
おまけ:遺伝子組換えと品種改良の違い
どちらもある目的のために、元々ある植物の性質から望ましい方向へと持っていくというのは変わらないんだけど、その手段が違ってくる。
品種改良は自然交配や突然変異を利用して、作物の望ましい性質を引き出す方法であるのに対し、遺伝子組み換えは、特定の遺伝子を直接導入することで性質を変化させる。
今回のQCAV-4の場合は、元々存在する遺伝子を機能させるようにするという点で、品種改良に近いアプローチと言える。
しかし、直接遺伝子を操作するという点で、従来の品種改良とは手法が異なるため、不安を感じる人も多いだろう。だたこういった食品の安全性については、品種改良にしろ遺伝子組換えにしろ、厳格な審査を経て承認されているということを覚えておこう。
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